実家じまい補助金とは?使える3種類と申請手順・注意点を解説

ただし「実家じまい補助金」という全国共通の制度はありません。実家がある市町村が独自に設けた補助金を、自分で探して申請する必要があります。
この記事では、使える補助金の3種類、自治体別にいくらもらえるかの実例、申請手順、そして交付前着工や固定資産税の落とし穴まで整理します。私が相続実務で見てきた失敗例も交えて書きます。
実家じまい補助金とは?まず知っておきたい基本

まず押さえてほしい一番大事な事実があります。「実家じまい補助金」という名前の単一制度は、国にも全国にも存在しません。
補助金はあくまで実家がある自治体(市町村)が独自に設定するものです。だから金額も期限も対象も、地域ごとに大きく違います。
実家じまい補助金の意味と対象になる費用
実家じまい補助金とは、空き家の解体・除却や改修にかかる費用の一部を、自治体が肩代わりしてくれるお金のことです。返済不要なのが、貸付(ローン)との大きな違いです。
対象になりやすいのは、倒壊の恐れがある古い家屋の解体費用、景観地区での建物の取り壊し費用、活用に向けた改修費用です。逆に、ただ古いだけの家がすべて対象になるわけではありません。
正直に言うと、ここを誤解している人が多いです。補助金は「防災」「景観」「活用促進」といった自治体の政策目的に沿うものだけが対象になります。
実家じまいで使える補助金は主に3種類
細かく見れば自治体ごとに名前は違いますが、大きく3種類に分けて考えると整理しやすいです。
| 種類 | 対象 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 老朽危険家屋の解体補助金 | 倒壊の恐れがある古い家屋 | 上限30万〜100万円 |
| 都市景観形成地域の除却補助金 | 景観地区などの建物の取り壊し | 自治体により異なる |
| 空き家の利活用・改修補助金 | 活用に向けたリフォーム等 | 自治体により異なる |
最も利用件数が多いのは、いちばん上の老朽危険家屋の解体補助金です。上限額は30万〜100万円が一般的なライン。
補助金以外に使える税制優遇制度
補助金と並んで効くのが税制優遇です。むしろ金額のインパクトは税金の控除のほうが大きいことも多い。
代表が「空き家の3,000万円特別控除」です。相続した実家を2027年(令和9年)12月31日までに売却し要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。相続人が3人以上の場合は2,000万円までです。
買主側に貸している(テナントがいる)家屋でなくても、売却翌年の2月15日までに耐震改修工事を行えば対象になります。これは2024年1月1日以降の売却から適用されています。
実家じまいで使える3種類の補助金を詳しく解説
ここからは3種類それぞれを、対象と金額の傾向を交えて掘り下げます。自分の実家がどれに当てはまりそうかを意識しながら読んでください。

老朽危険家屋の解体・除却補助金
最もよく使われるのがこれです。倒壊の恐れがある家屋を対象に、解体費の一部を補助します。
特に「特定空家等」に認定された危険な家屋は補助が手厚く、最大80万円程度(工事費の3分の1〜3分の2)になるケースがあります。旧耐震住宅(昭和56年5月31日以前の建築)の解体補助は、基準額の3分の1で上限40万円という設計が見られます。
都市景観形成地域の除却補助金
景観を守る地区に指定されたエリアでは、建物の取り壊しに補助が出る場合があります。古い町並みを整える政策とセットになっているのが特徴です。
逆を言えば、対象になるのは限られた地域だけ。実家が景観地区に入っているかどうかは、自治体の都市計画課や景観担当に確認するのが早道です。
空き家の利活用・改修補助金
解体ではなく「残して活かす」方向の補助金です。住み続ける、貸し出す、地域で使う、といった活用を前提にリフォーム費を補助します。
例えば京都市の「京町家の保全・継承」工事は、費用の2分の1(最大250万円)を補助します。これは景観・文化財的な価値を残す典型例です。
補助金はいくらもらえる?自治体別の活用モデルケース
「結局いくらもらえるの」が一番知りたいところだと思います。実際の自治体の例を並べます。金額の幅がそのまま地域差です。

| 自治体 | 制度 | 補助内容 |
|---|---|---|
| 東京都 | 空き家の家財整理・解体 | 家財整理費の2分の1(5万円まで)/解体費の2分の1(10万円まで) |
| 千葉県富津市 | リバースバンク登録支援等 | リフォーム費の半額(最大10万円) |
| 京都市 | 京町家の保全・継承 | 費用の2分の1(最大250万円) |
| 福岡県飯塚市 | 老朽危険家屋解体補助金 | 解体費の半額(最大50万円) |
| 北海道函館市 | 空家等除却支援補助金 | 対象経費の2分の1(上限30万円) |
東京都杉並区・千葉県千葉市の事例
東京都は、空き家の家財整理費用の2分の1を5万円まで、解体費用の2分の1を10万円まで補助します。金額は控えめですが、解体と片付けの両方をカバーする設計です。
千葉県内では富津市が、リバースバンクに関わるリフォーム費の半額(最大10万円)を補助します。地域によって「解体寄り」か「活用寄り」かの色が出ます。
愛知県名古屋市・京都府京都市の事例
京都市は前述のとおり、京町家の保全・継承で最大250万円。実家じまいの中では飛び抜けて高額です。ただし町家という条件があるので、誰でも使えるわけではありません。
このレンジの違いを見ると、補助金は「家を壊す」より「文化や景観を残す」方向に厚く出る傾向が読み取れます。
福岡県北九州市の事例と全国の傾向
福岡県では飯塚市が、老朽危険家屋の解体費の半額(最大50万円)を補助します。函館市の上限30万円と並べると、解体系は30万〜50万円あたりが一つの相場感です。
全国を通して見ると、解体補助は数十万円、活用・改修補助は物件の価値次第で大きく振れる。これが私の実感です。
補助金の申請手順と必要書類・スケジュール

補助金は「申請すればもらえる」ものではなく、順番を守らないと一円も出ません。ここが一番つまずく場所です。
基本フローは、相談→書類提出→審査・交付決定→契約・工事→報告の5ステップです。
事前相談から交付決定までの流れ
最初にやるのは、自治体の担当課への問い合わせです。建築指導課や空き家対策課など、自治体によって窓口名は違います。
ここで制度の有無・対象・受付期間を確認し、着工前に申請して交付決定を受ける。この「着工前」が絶対条件です。順番を間違えると対象外になります。
申請に必要な書類一覧
自治体ごとに細部は違いますが、求められる書類はおおむね共通しています。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 申請書 | 自治体所定の様式 |
| 建物・土地の登記事項証明書 | 所有者・名義の確認 |
| 解体や改修の見積書 | 業者が作成したもの |
| 現況写真 | 建物の状態が分かるもの |
| 位置図・配置図 | 場所と建物の配置 |
相続後で名義がまだ親のままだと、ここで詰まります。登記の確認は早めにしておくと安心です。
実家じまい全体にかかる期間の目安
補助金の事前相談から交付決定までで数週間、解体や改修の工事に数週間、その後の報告まで含めると、実家じまい全体では数か月単位で見ておくのが現実的です。
遠方の実家だと、現地立会いや書類のやり取りで時間が伸びます。余裕のあるスケジュールを組んでください。
申請でつまずかないための注意点と落とし穴
ここは現場で一番後悔を見てきた部分です。知らずに進めると、補助金がまるごと消えるどころか、想定外の出費まで増えます。

交付決定前に着工すると対象外になる落とし穴
最大の落とし穴がこれです。交付決定を受ける前に解体工事を始めてしまうと、補助の対象外になります。
「業者がすぐ動けるというから先に壊した」というケースを実際に見ました。後から申請しても出ません。順番は、申請→交付決定→契約・工事。ここだけは絶対に守ってください。
予算上限・先着順・受付期間のタイミング戦略
補助金には年度ごとの予算枠があります。先着順で、枠が埋まれば受付終了。これが見落とされがちです。
私のおすすめは、年度が替わって受付が始まる早い時期に動くこと。年度後半は予算切れで「制度はあるのに使えない」が起きます。動くなら早めです。
不採択・却下になるケースとその回避策
対象要件を満たさない物件、書類の不備、着工順序の誤り。却下の典型はこの3つです。
回避策はシンプルで、事前相談の段階で「うちの実家はこの補助金の対象になりますか」と具体的に確認すること。担当者に現況写真を見せながら相談すると、対象可否がはっきりします。
解体後に固定資産税が上がるリスクと対策
見落としてはいけないのが、解体後の固定資産税です。住宅が建っている土地は「住宅用地特例」で固定資産税が軽減されています。
建物を壊すとこの特例が外れ、土地の固定資産税が上がる場合があります。補助金で解体費が浮いても、税負担が増えれば差し引きで損ということも。対策は、解体後すぐに売却や活用の道筋を決めておくことです。
【独自解説】生前と相続後で変わる実家じまいの進め方
ここは競合記事であまり触れられていない論点です。実家じまいは「親が存命のうち」か「相続後」かで、進め方も難易度もまったく変わります。

親が存命のうちに進める生前実家じまい
私が相続実務で何度も感じるのは、生前に動けた家庭ほどスムーズだということ。名義が親本人なので意思決定が早く、思い出の品の取捨も本人と相談できます。
補助金の申請も、所有者本人が動ける生前のほうが書類面で楽です。親が元気なうちに「家をどうするか」を一度話しておくと、後の負担が大きく減ります。
相続後に進める場合の流れ
相続後は、まず相続登記で名義を相続人へ移す必要があります。名義が親のままだと補助金申請も売却も進みません。
登記が済んでから、補助金の事前相談・解体・売却へと進みます。3,000万円特別控除を狙うなら、2027年12月31日までの売却という期限も意識して逆算しましょう。
相続人が複数いる場合の合意形成と費用負担
きょうだいが複数いると、ここでもめます。誰が費用を出すか、解体か売却か活用か、思い出の品をどう分けるか。
正直に言うと、お金より感情でこじれることが多いです。早い段階で、解体費・補助金見込み・売却見込みを一枚の紙に書き出して全員で共有する。これだけで合意形成はかなり進みます。
補助金以外で実家じまいの費用を抑えるテクニック

補助金は対象が限られます。だからこそ、補助金に頼らない節約策も並行して考えるのが現実的です。ここは私が実際に効果を見てきたものに絞ります。
家財整理や片付けを自分で行う
遺品整理や残置物の撤去を業者に丸投げすると費用がかさみます。動けるうちに自分や家族で片付ければ、その分の費用は確実に減ります。
ただし仏壇や神棚など、供養が必要なものは無理に急がないでください。心の整理は別の話。ここは時間をかけていい部分です。
古家付き土地として現状渡しで売る
解体せず、古家付き土地として現状のまま売る選択もあります。解体費を自分で負担しなくて済むのが利点です。
買主が解体前提で買うので価格は下がりますが、手間と費用を考えると、現状渡しのほうが結果的に得なケースもあります。
複数業者の相見積もりと買取業者の活用
解体業者は必ず複数から見積もりを取ってください。同じ家でも金額が大きく違うことがあります。
売却が難しい物件や急ぐ場合は、買取業者に直接買い取ってもらう手もあります。仲介より価格は下がりますが、早く現金化できます。
悪質業者・追加請求トラブルの見分け方
安さだけで業者を選ぶと、後から「地中に廃材があった」などと追加請求されることがあります。これは現場でよく聞くトラブルです。
見積書の内訳が細かく、追加が出る条件を事前に書面で説明してくれる業者を選んでください。口頭だけで「だいたいこのくらい」と言う業者は、私なら避けます。
実家じまい補助金に関するよくある質問
最後に、相談の現場でよく聞かれる質問にまとめて答えます。

よくある質問
まず動くべきは、実家がある自治体への一本の電話です。制度があるか、対象になるか、いつまで受け付けているか。これを確認するだけで、進め方が一気に具体的になります。私が現場で見てきた失敗の多くは、確認の前に着工してしまったことが原因でした。順番を守って、損のない実家じまいにしてください。
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