実家じまいとは?費用・手順・始め方をわかりやすく徹底解説

この記事では、実家じまいの定義から、かかる費用と抑えるコツ、5つの手順、2024年4月に義務化された相続登記、売れない実家への対処までを通しで解説します。
私は相続実務を12年やってきて、遺品整理の現場にも同行取材を続けています。教科書的な話ではなく、実際につまずく所を中心に書きます。
実家じまいとは?意味とやることの全体像

実家じまいとは、親や祖父母が住まなくなった実家を整理・処分すること。片付け、相続登記、売却、解体、賃貸化までの実務全体を指す言葉として使われます。
ひとことで言えば「家じまいの実家版」。空き家のまま放置せず、きちんと次の形に整える作業です。
実家じまいの定義と注目される背景
親が施設に入った、亡くなって誰も住まなくなった。そうした実家が全国に増えています。放っておくと固定資産税はかかり続け、建物は傷み、近隣にも迷惑がかかる。だから「元気なうちに整理しよう」という人が増えました。
なお、空き家数や空き家率を語るなら、総務省「住宅・土地統計調査」のような公的統計で確認するのが筋です。民間記事の数字を鵜呑みにしない方がいい、というのは私が現場で痛感している点です。
実家じまいでやることの一覧
全体像をつかむために、やることを一覧にしました。順番に進めれば迷いません。
| 段階 | 主な作業 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 話し合い | 家族会議・方針決定 | 兄弟全員を必ず巻き込む |
| 2. 片付け | 遺品整理・不用品処分 | 重要書類と現金を先に確保 |
| 3. 名義 | 相続登記・名義変更 | 2024年4月から義務化 |
| 4. 処分 | 売却・解体・賃貸の決定 | 複数業者で相見積もり |
| 5. 手続き | 各種契約の解約・転居 | 公共料金やサブスクも忘れずに |
実家じまいを検討するタイミング
始めどきは大きく2つ。親が存命のうち(生前)と、亡くなった後(死後)です。
正直に言うと、私は生前の着手を強く勧めます。親本人に「何を残したいか」を聞けるからです。死後は判断する人がいなくなり、兄弟で揉めやすい。判断能力が落ちる前に動くのが、いちばんトラブルが少ない。
実家じまいにかかる費用と抑えるコツ
費用は基本的に不動産の所有者または相続人が負担します。片付け、解体、売却の手数料が主な出費です。

片付け・解体・売却にかかる具体的な費用
金額は家の広さや地域で変わります。ここは正直に幅で示します。確かな一律の相場という数字は、公式統計には存在しません。
私が現場で見ている範囲では、遺品整理は荷物の量で大きく動き、解体は構造(木造か鉄骨か)で単価が変わります。見積もりは必ず複数取ってください。
費用を抑えるためのポイント
いちばん効くのは相見積もりです。業者を3社ほど競わせるだけで、金額が大きく変わることはざらにあります。
次に、自分で処分できる物は先に減らすこと。リサイクルやフリマで現金化できる物もあります。あとは後述の補助金と税の特例を取りこぼさないこと。ここを知らないだけで損をしている人が多い。
活用できる補助金や特例
解体費の補助は自治体ごとに用意されています。名称も金額も要件もバラバラなので、必ず実家のある市区町村の制度を確認してください。
| 自治体 | 補助内容 | 上限など |
|---|---|---|
| 東京都北区 | 解体費用の1/2を補助 | 上限80万円 |
| 函館市(空家等除却支援) | 対象経費の1/2を補助 | 上限30万円 |
| 京都市(京町家の保全・継承) | 工事費の1/2を補助 | 最大250万円 |
補助の条件には「1年以上空き家」「昭和56年5月31日以前の建築」などを求める例があります。申請のタイミングも決まっているので、解体前に必ず確認を。
売却時にかかる税金と特別控除
相続した空き家を売ると、利益に譲渡所得税がかかります。ただし要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。これが「空き家の3,000万円特別控除」です。
対象は相続や遺贈で取得した被相続人居住用家屋とその敷地。昭和56年5月31日以前に建築されたこと、区分所有建物でないことなどの要件があり、2027年12月31日までの売却が対象です。
税制改正で、買主が解体する場合も一定条件で対象に含まれる取扱いが示されました。親が老人ホームに入居していたケースでも、条件を満たせば対象になり得ます。ここは判断が細かいので、私は税理士か税務署に確認するよう必ず伝えています。
別の制度として、相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」もあります。空き家特例と取得費加算は併用可否があるため、どちらが得かは個別判断です。
実家じまいの進め方を5つの手順で解説
ここからは実際の動き方です。民間記事ベースでは着手から完了まで3か月〜1年程度とされますが、これは公式統計ではありません。私の体感でも、遠方だと1年近くかかることは珍しくない。

家族会議と意思決定
最初は話し合いです。兄弟姉妹全員を巻き込むこと。あとから「聞いていない」が一番こじれます。
切り出し方は難しく考えなくていい。「将来あの家どうする?」と早めに口にするだけで十分です。費用負担のルールも、この段階で決めておくと後が楽です。
実家の片付けと遺品整理
片付けは想像の倍は出ます。まず通帳・権利証・保険証券・現金を確保。これを後回しにして処分業者に丸投げし、大事な書類ごと捨ててしまった例を私は見ています。
量が多ければ遺品整理業者に頼みます。ここでも相見積もり。見積書に「追加料金なし」と明記してもらうと安心です。
不動産の今後を決める(売却・賃貸・解体)
選択肢は売る・貸す・解体して更地にする、の3つが基本。立地が良ければ売却、駅から遠く需要が薄ければ解体や賃貸も検討します。
私の立場を言うと、迷ったら売却を第一に考えます。賃貸は管理が続き、空き家のまま持つと税負担とリスクだけが残るからです。
親の転居と各種契約の解約手続き
住む人がいなくなったら、契約の解約が地味に多い。チェックリストにしておくと取りこぼしません。
| 分類 | 対象例 |
|---|---|
| 公共料金 | 電気・ガス・水道 |
| 通信 | 固定電話・インターネット・NHK |
| サブスク | 新聞・動画配信・定期購入 |
| 保険・金融 | 火災保険・各種契約・口座 |
| デジタル遺品 | スマホ・SNS・ネット銀行 |
火災保険は解約すると返戻金が戻ることがあります。止める前に確認してください。
相続登記・名義変更の手続きと放置のリスク

ここが実家じまいの肝です。名義を変えないと、そもそも売却も解体もスムーズに進みません。
相続登記の義務化と過料リスクへの対応
相続登記は2024年4月1日から義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
正当な理由なく期限内に申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。「まだ売らないから」と放置していると、ここで罰則が効いてくる。早めに動いてください。
名義変更・相続手続きの必要書類と流れ
流れは「遺産分割協議→必要書類の収集→登記申請」。被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍と印鑑証明、遺産分割協議書などをそろえます。
戸籍集めは想像以上に手間です。自分でやるか、司法書士に任せるか。費用はかかっても、登記は専門家に頼む人が多い、というのが私の周囲の実感です。
空き家のまま放置した場合の増税とトラブル
放置の代償は重い。管理不全と判断され「特定空家」「管理不全空家」に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が外れ、税が跳ね上がる可能性があります。
さらに倒壊や雑草、放火など近隣トラブルの種にもなる。「とりあえず置いておく」が一番損をする、と私は何度も見てきました。
つまずきやすいケース別の対処法
ここからは「うちはこれが心配」というケース別の話です。実際の相談で多いものを並べます。

遠方・遠距離での進め方と代行サービス
実家が遠いと帰省のたびに交通費と時間が飛びます。段取りのコツは、帰省を「現地でしかできない作業」に集中させること。
書類の収集や業者とのやり取りは電話やオンラインで進め、現地代行サービスに立ち会いを頼む手もあります。1回の帰省で複数の業者見積もりをまとめて受けると効率的です。
兄弟姉妹間の意見対立・費用分担のトラブル回避
揉める原因はだいたいお金と「公平感」です。誰が動いて、誰がいくら出すか。ここを口約束で済ませると後で必ずこじれます。
遺産分割協議書に費用負担も含めて文章で残す。手間に見えて、これが一番のトラブル予防です。
親が認知症・判断能力低下後のケース
親の判断能力が落ちると、本人名義の不動産は勝手に売れません。成年後見制度を使うことになり、手続きと時間がかかります。
だからこそ生前の意思確認が効く。元気なうちに「どうしたいか」を聞き、必要なら家族信託なども検討しておく。これは本当に早い方がいいです。
売れない実家・権利関係が複雑な物件への対応
買い手がつかない実家もあります。空き家バンクへの登録や、相続した土地を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度といった選択肢があります。
農地・山林・共有名義は権利関係が複雑で、素人だけでは進みません。私の経験上、ここは早めに司法書士や専門業者に相談した方が、結局は安く済みます。
仏壇・墓じまいなど祭祀財産の整理と供養
見落としがちなのが仏壇・神棚・お墓です。これらは祭祀財産と呼ばれ、不動産とは別の整理が必要になります。

仏壇・神棚の処分と供養の進め方
仏壇は「ただ捨てる」のではなく、菩提寺や仏具店で閉眼供養(魂抜き)をしてから処分するのが一般的です。
神棚も同様にお祓いをしてから。家族の気持ちの区切りにもなる工程なので、私はここは省かない方がいいと考えています。
墓じまいの流れと注意点
お墓を片付ける墓じまいは、改葬許可の取得→閉眼供養→遺骨の取り出し→墓石撤去→新しい納骨先の確保、という流れです。
注意点は、寺院との関係と費用。離檀料をめぐって揉める例があるので、菩提寺には早めに丁寧に相談してください。実家じまいと並行すると負担が大きいので、時期を分けるのも手です。
【体験談】実家じまいは寂しい?やってよかったこと・後悔

現場で施主の方から聞いた声を、率直に紹介します。実家じまいは事務作業であると同時に、感情の整理でもあります。
実践面のメリット・やってよかったこと
いちばん多いのは「肩の荷が下りた」という声。固定資産税や管理の心配から解放され、相続登記も済ませて将来の不安が減る。
きょうだいで作業を分担し、かえって連絡が増えたという人もいました。やり切った後の安堵は、想像以上に大きいです。
感情面のデメリット・寂しさ
正直に言えば、寂しさはあります。育った家がなくなる。これは事務手続きでは割り切れない。
片付けの途中で子どもの頃の物が出てきて、手が止まる。多くの方がそう話します。ここはデメリットというより、避けられない感情だと思っています。
寂しさを乗り越えるためのヒント
私がよく勧めるのは、家の写真を撮っておくこと。間取りや庭、家族で集まった部屋を残しておくと、後で気持ちの拠り所になります。
思い出の品を全部は残せない。だから「これだけは」を数個だけ選ぶ。全部抱えようとすると前に進めません。実家じまいは終わりではなく、新しい暮らしの始まりだと、私は本気で思っています。
実家じまいに関するよくある質問

